About Sword World 2.0

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【シナリオフック】カルディアが砕けなかった世界の話

――『カルディア再生機構、とある研究者の日記より』 

 

 

『カルディアが再生することで、世界はバランスが初めて取れる。
世界は三本の剣によって創られた。世界は三本の剣がありきである。
人族と蛮族の飽くなき戦乱の世の中は、当然のことだ。

調和と解放が相容れる緩衝材となり得るカルディアが不在となり、拮抗が崩れているのだから』

 

そして、所長は演説でこう続けた。

 

『この第三の剣が君臨することで、世界は安定がもたらされる。

ならば、どうすればその哀しみの無い世界を築けるか。

『カルディアが壊れなかった世界線』へと、この世界を変更すること。そのために過去の歴史を改竄する』

 

『過去の歴史が改竄されることによる世界の変遷は諸説ある、世界線が変わるのか、それとも分岐し直すことにより世界が作り替えられるのか、でもそんなことはどちらでも良い、カルディアが砕けたこの世界に価値は無いのだから』

 

所長の主張に感銘した私はカルディア再生機構に傾倒した。

しかし、そうしてカルディアについて研究を重ねていくうちに、怖ろしい事実が発覚した。

 

とあるハイマンの話す内容は、正直今でも信用がならない……だが、私にはこれを否定する材料を持ち得なかった。

 

誰にも話せない、だがこの事実が葬られるのもあまりに忍びない。

せめて、日記として……残したいと思う。

 

―――――。

 

 

“カルディアの傍人” ティア・ドロップ。

 

カルディアを見守り続けた女性。『カルディア』が“砕けなかった”世界から、カルディアを砕く為に戻ってきた唯一の存在。

 

第一の剣ルミエルを、ライフォスが手にした。次に、第二の剣イグニスをダルクレムが手にしたのは、多くの民が知っている正史であり、その後カルディアが砕けたことも周知である。

だが、この世界こそが創られた世界であり、本来は誰かがカルディアを手にしていたのだ。

我々が生きるカルディアが砕けた歴史ではなかった世界の話だ。

 

第一、第二の陣営に加え、カルディアを手にした第三勢力が参入したことで、戦いは激化。

魔法の概念を専有した第三勢力は圧倒的力を誇った。

 

第二の剣陣営である蛮族も、戦略を重んじ、上位蛮族による高度な戦略と統一された戦闘に加え、数と暴力により、魔族ともある程度は渡り合えていた
しかし、それでも魔法の力は尋常であり、カルディア陣営の優勢は揺るぎなかった。 

 

圧倒的に暴力を手にすることも出来ず、原始的な戦闘のままであった第一の剣は陣営は悪化の一途を辿る。

人族、及びそれに類する立場は最低のものとなる。

 

第一の剣陣営を人族、第二の剣陣営を蛮族と呼ぶように、第三の剣陣営は魔族と呼ばれていた。

魔族>蛮族>人族の順で格付けが行われ、時は過ぎていった。

 

魔族は主に今で言うナイトメアのような人種だ。

魔法を効果的に活用するべく、最低限穢れの概念は必要であるものの、蛮族のように限界まで取り込み身体を変貌させ暴力に頼るなどナンセンスという考えで進化し、魔族は全員穢れを1点有した状態で産まれる。

しかし、人族のナイトメア、蛮族のウィークリングといったイレギュラーが存在するように、魔族にも穢れを多く有したり、少なくして産まれるイレギュラーもあった。

 

穢れを多く有したものは第二の陣営のような性質を激しく持つ者が多いため、生まれた瞬間殺されることが通例であり、穢れを多く有した魔族は『セカンド』と呼ばれた。
逆に、穢れを持たずに生まれた魔族は『ゼロ』と呼ばれる。

学術的観点からの使用ではあるが、通常個体を『ファースト』と呼ぶ。

 

『ゼロ』は第一陣営の性質を強く持って産まれる為、気性は至って温和であり、特に迫害されたりといった文化は無かった。

 

冒頭に記載した、カルディアが砕けなかった世界からの、唯一の帰還者ある『ティア・ドロップ』は魔族のゼロであった。

彼女は、最低限の魔法は理解したものの、適性で言えば『ファースト』に劣る為、彼女は生まれ故郷を去った。

魔族は、人族と蛮族は自らの一族よりも劣るもの、下等生命体であるとして教わり育つ。だが、彼女は旅する先々で出会った人族は、自分たちと何ら変わらない存在だということを知った。

 

戦乱の世が終わらず、魔族以外が迫害される世界そのものに疑問を持った彼女は、研究を始める。

そうして、魔族の存在こそが諸悪の根源であると理解し、カルディアの破壊を決意した。

彼女は、永い時の果て、過去へ飛ぶ方法を発見した。

 

また、あらゆる因果の全てが重複するタイミングに合わせることで、原初の剣を破壊する方法を理論的に確立した。

 

しかし、『ティア・ドロップ』は一つの懸念があった。

自らが、カルディアの壊れない世界から、破壊するために過去へ戻れたということは、その逆もあり得るという話だ。

 

カルディアの壊れた世界、つまり我々が今生きるこのラクシア世界から、『ティア・ドロップ』の試みを阻止する者が現れる可能性を思慮したのだ。

 

『ティア・ドロップ』は、カルディアにヒトが触れる前の時間に降り立った。

唯一、専有している魔法の技術を駆使し、複数の人間にある魔法を行使した。

その魔法というのは、魂が転生したとしても、与えた使命を実行し続けるというものだ。

内容は『カルディアを砕く歴史を改竄させない』という使命だ。

 

私が話を聞いたハイマンこそ、この『ティア・ドロップ』の使命を受けた人族であり、彼の前世こそ、『ティア・ドロップ』の付き人であたっという。

 

この話を聞いた、私は……進むべき道を失った。