バード技能、主に【チャーミング】についての考察
基本ルールブックⅡに載っているバード技能、一見すると使い辛いし……条件も複雑だし、なんだこれ……。と割とスルーしている人も多いと思います。
しかし、バードはデータを良く理解している人が本気で、かつ紳士協定もナシに使うとGMは涙を流すだけで済めば良し、下手をするとシナリオブレイクとなります。
案外、自分が詳しくない技能を放ったままにしておき、軽い気持ちで
許可をすると大変な事になってしまいます。
いざPLが使おうとした際、自分が考えているかなり斜め上を行く結果になってしまいます。
下手に許可をしたばっかりに引っ込みがつかないと、本当に崩壊の危機です。
こういった話はバード技能に限った話ではないですが、今回は特にその危険性の高いバード技能について触れていきたいと思います。
1.『とりあえず注意するのは【チャーミング】』
戦闘に使われると最も不味いのは、【チャーミング】だと言えるでしょう。
これは、精神抵抗をぶち抜いた対象の言うことを聞かせるというものです。これに関して、リプレイ『マージナル・ライダー』(著:田中公侍)の中の裁定を引用してみましょう。
※マージナル・ライダー含めたリプレイのレビューはこちら
『 キャンパスが歌おうとしている呪歌【チャーミング】は、歌を聴いた全ての対象を聞き惚れさせ、積極的な行動をとらせない呪歌です。抵抗に失敗した対象は、正気で判断力もそのままですが、歌に聞き惚れてしまい、能動的な行動を行えなくなります。
さらに【チャーミング】には同時に特定の言語を歌詞に含むことで、その歌詞の内容の行動を取らせるという、強力な付加効果もあります。ただし、言語の種類に関わらず歌は範囲内の全てのきゃrカウターに影響を及ぼしますし、言語が通じても、対象そのものを危機に陥らせるような内容の行動は指定できません。また、対象に攻撃的な行動も、反撃をウケる危険性を与えるという意味において、指定できません。また、HPかMPに1点でもダメージを受けると、歌の効果から開放されます。
~中略~ 今後、他のGMはこのような状況が発生する場合、同じように裁定しても構いません』
重要な文言は『対象そのものを危機に陥らせるような内容の行動は指定できません』という所です。
ですので、例えば敵ボガードに対して【チャーミング】を唱え『自害せよ、ボガード!』といった命令は原則出来ない、ということです。
これは効果の中にも書いてあるので、然程解釈が分かれる事は無いでしょう。
加えて、リプレイ内では蛮族に対して「蛮族を攻撃しろ!」と言った内容が無効と裁定されました。
同士討ちを行わせるものも、広義として対象に危機を陥らせるものと解釈できるようです。
これに無効となる類する命令として
・回避をするな
・攻撃をするな
・魔法を唱えるな
等の命令が考えられます。GMは、ここは「結果として戦闘を放棄する事になり、対象を危機に陥ることと解釈出来るのでそれらの命令は無効とします」と勇気を持って伝える事が大事でしょう。
2.呪歌の解決方法
GMとして、いくつか把握しておきたい事があります。
・呪歌は精神効果属性(弱)である。
・原則、範囲内全てに効果を及ぼす。
という二点さえ抑えておけば、最悪の事態は避けられます。
まず、精神効果属性(弱)とは何か? 詳しくはウィザーズトゥームを参照して頂きたいのですが。
上記にもあった通り『HPかMPに1点でもダメージを受けると、歌の効果から開放されます。』
ということです。不利な効果を受けていても、HPかMPに1点ほどダメージを受けてしまえば良いのです。
究極的に言えば、「蹴飛ばして目を覚まさせる」ということも可能です。
【スリープ】などで寝ている味方を同様の行動で起こす事が可能なのですから、理不尽な行動ではありません。
データ的に裁定するなら、【スパーク】等の最も弱い魔法を撃ちこむ等して解決することが可能です。
ですので、精神抵抗が高いボス格なり、精神効果属性が無効を持っている敵なりを一体配置しておけば、そのキャラが他のキャラにダメージを与え、呪歌の不利な効果を打ち消す事が出来ます。
ボス格の手番が、皆を正気にさせる事で1手番消費させた、と思えば呪歌を使用したPCに、無駄感を与える事なく進行が可能かと考えられます。
次に範囲内全てに効果を及ぼす、ということです。
たとえば、汎用蛮族語で何か悪い命令をしたとしたら、汎用蛮族語を持っている人達全てに同様に悪影響を及ぼさせなくてはなりません。
当然、それは味方も含みます。GMはその辺りの危険性も示唆すべきです。
3.だからと言って安易に精神効果属性無効をつければ良いってワケじゃない
こればかりは擁護できない、『何故こんなシロモノを作った……』という凶悪なアイテムがあります。GMは必ずこれを知っておいてください。
AW97頁、Ⅲ165頁〈フィスタロッサム〉
詳しい効果等は、上記の頁を参照して貰いたいのですが、簡単に言えば「精神効果属性無効の効果を無効にする」というシロモノです。
つまり、精神効果属性が無効であるアンデッドや魔法生物にだって、これを使えば呪歌をの効果を与える事が出来ます。
まともな心を持たない筈のレブナント達で、下手をすれば、〈ライトスティック〉を振りながらライブ会場と化す可能性もあり得るのです。
オリジナル魔物を作成し、◯精神効果属性無効 等書いていても無駄なのです。
露骨なメタになってしまいますが、これらと対処法として以下の方法があります。
・言語:なし に設定する。
・精神効果属性に対しての達成値を別に高く設定する。
前者は、アンデッドや魔法生物、動物等にしか使えませんが、特に【チャーミング】等は対象がわかる言語でなければ命令が行えません。そこで、言語:なし にしてしまえば効果は受けないというバード対策です。
後者は、「精神効果属性無効とするが、達成値が要求される場合はXとする」や 「精神効果属性無効ではなく、精神効果属性での判定は自動成功とする」等の記述に変えれば一応封じる事が可能です。
もしくは、【メディテーション】の効果を常に受けている、等精神効果属性に対しての達成値を上昇する効果を追加すれば、解決します。
4.バード技能との付き合い方
原則、GMはPLの提案を受け入れたいものですが……安易に受け入れると大変な事になるのは、冒頭でも述べました。
例えば、冒険者が一般人相手に【ヌーディ】【ラブソング】等という事をしようものなら、街が大パニックになります。
それが笑いとして許されるのであれば良いですが、シナリオに大きな影響を与えてしまう場合、GMは正直に、やめて欲しいと伝える事も大事だと思います。余程、困ったPLじゃなければ、提案しただけで笑い話にして貰える筈です。
当然、そんな混乱に陥れる冒険者は、犯罪者として扱われる可能性だってあります。 そういった事を示唆することも効果があるかもしれません。
あるいは、精神効果属性(弱)であることを踏まえ、「多くは人間であり、一部の人達は抵抗に自動成功した」「正気な人間、服を脱ぎだそうとする人間でパニックが起こり、将棋倒しのように人達は地面に倒れ、痛みで正気に戻る」
など工夫しても良いかもしれません。
散々バードが悪者のように述べましたが、悪用しなければ、バード技能はキャラ付けとしても面白い技能だと思います。
バード技能で路上演奏でおひねりを与えても良いですし
私が行ったセッションで、PLが前述した〈フィスタロッサム〉を使って、アンデッドはびこる村に【キュアリオスティ】でアンデッドだけを誘い出そうとした作戦などは上手い使い方だなと感心しました。
こうした使い方は積極的に採用していくべきだと思っています。
余談ですが、マージナル・ライダーでは【チャーミング】の効果を使用した後、無効だと裁定していました。
私は正直、これが良い裁定だとは感じませんでした。
無効、というのは貴重なPCの一手番を無為に消費させる事になるので、「無効」と裁定する場合は判定を行う前にGMは告げる、あるいは例外的に巻き戻すべきでしょう。
更に余談ですが、『ネギ』の学名は「Allium fistulosum」と言うらしいですね。アイテムの効果を併用して読んでみると……?